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小型ヨットによる航海の可能性
2002.6.28
都市構造研究所 雛元 昌弘
1.カヌーや小型ヨット(アウトリガー・セイリングカヌー)による航海
- かつて、北方民族は、樹皮・獣皮カヌーで、日本海〜オホーツク海〜ベーリング海〜カナダ沿岸〜グリーンランド〜スカンジナビアにかけて、沿岸や内陸の湖や川を広く航行していました。中には、セールを使った獣皮カヌーもありました。
- また、ポリネシア〜メラネシア〜ミクロネシアにかけて、小型ヨット(アウトリガー・セイリングカヌー)による大航海が行われていました。
- 日本は、この2つの文化が交流する位置にあり、両方の舟の文化を受け継いでいる可能性があります。
- 木や鉄の構造船の時代、動力船の時代になり、これらの舟の文化は廃れてきましたが、ドイツにおいてファルトカヌーがアウトドアレクリエーションの1つとして普及するとともに、アメリカを中心にして、カヌー(シーカヤックを含む)を楽しむ大きな流れができました。
- 一方、小型ヨットは、アウトドアレクリエーションとしての普及はほとんどなく、小型ヨット=スピード競技、クルーザー=航海、という発展をとげてしまい、小型ヨットで航海、という文化は、現在、日本ではないといってよいと思います。
- 私たちは、小型ヨットを、自然にやさしい移動の道具、人数分のキャンピング用品などの運搬の道具として、よみがえらせたいと考えています。
2.現代における小型ヨットによる航海の意義
- 小型ヨットでの航海は、丸木船→板張りの構造船→クルーザー(より重く、大きく)と発達してきたヨットの歴史とは逆の、歴史に逆らう流れにあります。安定性・安全性を高めてきた方向とは逆の、シーカヤックに帆をつけたような、冒険になります。
- スピードを極限まで追求した競技艇の小型ヨットから、クルーザーへの流れは、忙しい現代人の生活の中では、全天候型の高性能艇、動力艇へと必然的に発展していくと思います。
小型ヨットによる航海は、このような自然条件をハード技術で超えていくという発想ではなく、天候を読んで危険を避ける、時間をかけて危険を避ける、というように工夫する、沿岸をたどる航海となります
- 自然に挑戦するのではなく、自然に対して謙虚に、自然の風をうまく活用する航海、これが小型ヨットの航海です。
3 クルーザーとは異なる、小型ヨット航海の方法
- アウトリガー艇を使う(ハード対策) 沈を舟の構造で防止するには、クルーザーのように重いセンターボードをつけるか、アウトリガーをつける方法のどちらかになります。
重量センターボード艇は、桟橋がある港でないと接岸できないため、自然海岸を求める小型ヨットの手軽さや軽さと逆行します。そこで、トラベラーとトリッパーでは、アウトリガーを取り付けられるようにしました。また、ランブラーでは、空気で膨らませるサイドフロートを船腹に取り付けられるようにし、安定性を高めています。
アウトリガー艇では、転倒する危険性は、ほとんどなくなります(風下側に体重を残すような失敗がなければ)。
- 天候を選んで航海する(天候対策)
もう1つの方法は、できるだけ沈しないような自然とのつきあい方や乗り方をする、という航海になります。
時間をかけて、危険な天候をさけて航海する、ということと、沈しやすい風との角度をさけて進む、という方法です。少々天候や風向きが悪くても、重い艇の構造やエンジンで乗り切る、という方法とは対極の、時間をかけて安全に進むという航海になります。
危険な天候をさけて航海する、ということでいえば、気象観測体制の整備や情報通信機器や情報サービス提供の充実で、日本の沿岸などであれば、格段に天候を予測する精度はあがり、天気図や天気予報などの情報の入手も容易になっています。パソコン通信や携帯電話を使えば、危険を避けることができる確率は格段に高まってきています。
- 沈しない乗り方をする(セイリング技術対策)
また、ヨットで沈するほとんどのケースは、ジャイビング(風下に向けた、風軸を超えた方向転換)の時か、追い風で走っている時(ランニング)に、風向きが少し変わったり、進む方向が知らず知らずのうちに変わって、ジャイビング状態になり(帆が反対側に急激に動く)、体重が風下側に残ってバランスを崩して沈するケースです。
これらの事態を避けるには、多少、時間がかかっても、上手回し(風軸を横切らないで、風上に回ってタッキングで方向転換する)で安全に方向転換することと、追い風を真後ろから受けて走るのではなく、風の方向に少し角度をつけて走り、時々、上手回しで方向転換して進む、という方法をとることです。
- 小型ヨットとシーカヤックを組み合わせる(フェイル・セーフ対策)
とはいっても、単独航海はリスクが大きいと思います。小型ヨット2隻だと、1艇が沈没した時に、セルフリカバリーした時に、側面から援助が可能です(例えば、道具を流したりした時など)。
さらに、私たちの経験では、小型ヨットとシーカヤックの組み合わせがより安全で、面白いと思います。狭い内湾などで風がないときに、シーカヤックは小型ヨットを牽引でき、風があるところでは、小型ヨットの牽引力は大きいからです。また、島など、複雑な地形のところを探検したり遊ぶ時なども、シーカヤックは小回りがききます。
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4 小型ヨットの航海の世界
小型ヨットの航海は、重装備のクルーザーから較べると心もとないように思いますが、大型遠征隊による登頂と単独登頂との違いのようなもので、小型ヨットの航海が絶対的に不利、というものではありません。
例えば、クルーザーで自然の浜辺に直接つける、ということはできません。整備された港から港への移動しかできないのです。
クルーザーの航海とは異なる、小回りのきく小型ヨットの特徴を活かして航海を楽しむ文化を創りたいものです。